楽曲のミックス・マスタリングが目指すべき最終的な目標とは?

楽曲のミックス・マスタリングが目指すべき最終的な目標とは?

音楽を趣味で作っている人、仕事として楽曲制作をしている人。

そして、自分でミックス・マスタリングまで行う人もいれば、エンジニアへ依頼する人もいると思います。

制作環境や目的は人それぞれですが、ミックス・マスタリングにおいて最終的に目指すべきところには、ある程度共通するものがあります。

それは、

「実際に音楽を聴く人の環境で、制作者が意図した音楽としてきちんと成立すること」

です。

スタジオで100万円以上するスピーカーから最高の音が出たとしても、リスナーがイヤホンで聴いた瞬間にボーカルが埋もれてしまう。

逆にスマートフォンでは迫力があるのに、まともなスピーカーで聴いたら低音がめちゃくちゃになっている。

これでは、個人的には良いミックスとは言えません。

私は以前レコーディングスタジオやPAなど音響の現場で仕事をしていましたが、現在自宅で制作する場合にも、

「どこで、誰が、何を使ってこの音楽を聴くのか」

ということを大切にしています。

今回は、そんな楽曲のミックス・マスタリングにおいて私が大切だと考えている「最終的なアウトプット」について話してみます。

音楽のアウトプット先を考えてミックス・マスタリングする

ミックスをするとき、

「とにかく良い音にする」

だけでは、実は目標としてかなり曖昧です。

そもそも**良い音とは何なのか?**という話になってしまいます。

低音がたくさん出ていれば良いのか。

ボーカルが大きければ良いのか。

音圧が高ければ良いのか。

もちろん、そんな単純なものではありません。

そこで私が重要だと思っているのが、

完成した音楽が最終的にどこで使われるのか

を考えることです。

SNSやYouTubeなどで配信する場合

YouTubeやSNSを中心に公開する楽曲の場合、リスナーの再生環境は本当に様々です。

高価なオーディオシステムを使っている人もいると思いますが、

  • スマートフォン
  • ワイヤレスイヤホン
  • 一般的なヘッドホン
  • PC内蔵スピーカー
  • Bluetoothスピーカー

などで聴く人も非常に多いでしょう。

ここで重要なのが、

「スタジオで良く聴こえるから完成!」にしないことです。

例えば低音が豊かに再生されるモニター環境だけでミックスしていると、スマートフォンで再生した時にベースの存在感がほとんどなくなってしまうことがあります。

逆に小さなスピーカーだけを基準に低音を調整すると、低域までしっかり再生できる環境では低音過多になる可能性があります。

だからこそ、最終的には複数の環境で確認します。

「普通の人が普通に聴いた時にも成立しているか?」

ここはかなり重要だと思っています。

商業リリースの場合

商業作品だからといって、最終的なリスナー全員が専門的な音響機器で聴くわけではありません。

むしろ現在では、商業作品であってもイヤホンやスマートフォン、車など様々な環境で再生されます。

だからこそ要求されるのが、

再生環境が変わっても大きく印象が崩れないこと

です。

制作段階では細かな音の変化を判断できるモニター環境を使う。

しかし最終確認では、一般的な再生環境でもチェックする。

この両方が大切です。

「プロ用のスピーカーで最高に聴こえます!」

だけでは不十分なんですよね。

最終的に聴くのはエンジニアではなく、リスナーです。

映画館や専門的な音響設備で再生される場合

映画館や大規模な音響設備など、再生環境そのものがある程度想定できるコンテンツでは話が少し変わります。

非常に広いダイナミックレンジや低域まで再生できる環境だからこそ表現できる音があります。

小さなイヤホンでは分からなかった細かなノイズや定位、空間表現まで聞こえてしまうこともあります。

私自身、以前音響の現場にいた時に感じたことですが、

再生環境が良くなるほど「良いところ」だけではなく「悪いところ」まで普通に聞こえます。

高価な機材なら何でも良い音にしてくれるわけではありません。

むしろ逆です。

問題までしっかり聞かせてくれます(笑)

だからこそ、最終的な使用目的に合わせた判断が必要になります。

状況に合ったミックスの仕方を学ぶ

ここまでの話で、

「じゃあイヤホンで配信される曲ならイヤホンだけでミックスすればいいの?」

となるかもしれません。

これは違います。

基本となる判断環境を作ったうえで、実際の再生環境でも確認するという考え方が重要です。

一般的な再生環境でも必ず確認する

私が大切だと思っているのが、

一般的なリスニング環境で実際に聴いてみることです。

例えば、

  • 普段使っているイヤホン
  • スマートフォン
  • 一般的なヘッドホン
  • PCスピーカー
  • 車のオーディオ

こういった環境です。

高性能なモニタースピーカーでは完璧だったのに、

スマートフォンで聴いたら、

「ボーカルどこ行った?」

となったら問題です(笑)

もちろん、すべての再生機器でまったく同じ音にすることはできません。

それぞれ再生できる周波数も特性も違います。

重要なのは、

環境が変わっても楽曲として重要な部分が破綻していないこと。

ボーカルがちゃんと聞こえる。

ベースの存在が分かる。

キックとの関係がおかしくない。

楽曲として狙った雰囲気が伝わる。

こういった部分を確認します。

商業的な制作では正確に判断できる環境も必要

一方で、

「最終的にイヤホンで聴かれるなら、イヤホンだけあればいいじゃん!」

というわけでもありません。

ミックスでは、

問題を発見するための環境も必要だからです。

  • 低域のバランス
  • 定位
  • リバーブ
  • コンプレッション
  • ノイズ
  • 細かな音量差

こうした部分を正確に判断するには、ある程度信頼できるモニター環境が必要になります。

そこで基準となる音を作ってから、一般的な再生環境へ持っていって確認する。

私はこの考え方が重要だと思っています。

高い機材は必要?不要?

音楽制作を始めると必ず出てくるのが、

「高い機材を買えばミックスが上手くなるのか?」

という問題です。

結論から言えば、

高い機材を買っただけで良いミックスができるようになることはありません。

ただし、高い機材に意味がないわけでもありません。

ここは分けて考える必要があります。

高い=良い音ではない

例えば非常に高価なモニタースピーカーを購入したとします。

でも、そのスピーカーが置かれている部屋の音響特性を理解していなかったり、そもそも自分がそのスピーカーの音に慣れていなかったりすれば、正しい判断ができるとは限りません。

個人的には機材そのものより、

「その機材から出ている音を自分がどれだけ理解しているか」

の方が重要だと思っています。

いつも聴いている曲が、このスピーカーではどう聞こえるのか。

低音はどの程度出るのか。

ボーカルはどの位置に聞こえるのか。

そこを理解して初めて、その機材を判断基準として使えるようになります。

安い=悪い音でもない

逆に、安い機材だから使えないというわけでもありません。

私自身、かなり長期間使っている機材もあります。

最新でもなければ、ものすごく高価なものでもありません。

それでも、

「この機材なら、この音がどう聞こえれば大丈夫なのか」

を理解していれば判断材料として使えます。

むしろ一般的なイヤホンやスピーカーは、最終確認用として非常に重要です。

リスナーが実際に使っている可能性が高いからです。

数十万円のスピーカーと数千円のイヤホン。

どちらが偉いという話ではありません。

役割が違います。

クオリティを担保できる機材は自分で経験していく必要がある

ここが個人的にはかなり重要だと思っています。

「この機材を買えばプロの音になります!」

というものはありません。

機材を使い、

いろいろな楽曲を聴き、

実際にミックスし、

別の環境で確認して、

また戻って修正する。

この経験を繰り返して、

自分の中に音の基準を作っていく必要があります。

スタジオサウンドを目指すなら実際のレコーディング現場を知る

私は過去にレコーディングスタジオで仕事をしていました。

そこで得られたものは、

「高価な機材を触った経験」

だけではありません。

むしろ大きかったのは、

プロの現場で実際にどんな音が鳴っているのかを体験できたこと

だと思っています。

録音された直後の音。

ミックス中の音。

完成した音。

それらがスタジオのモニターからどう聞こえるのか。

さらにエンジニアが何を聞いて、どこを修正しているのか。

これは本やYouTubeだけでは完全には分からない部分です。

私が現在自宅でミックスする時にも、この経験は一つの判断基準になっています。

自宅環境でも基準となるスピーカーがあると良い

だからといって、自宅にプロスタジオと同じ設備を作る必要はありません。

普通に無理です(笑)

ただ、自宅でも、

「ここを基準に判断する」

というモニター環境は作っておいた方が良いと思います。

重要なのは価格だけではありません。

自分の部屋で使えること。

自分が音を理解していること。

普段からいろいろな楽曲を聴いていること。

そして必要に応じて別の環境でも確認すること。

これらを組み合わせることで、自宅でもかなり精度の高い判断ができるようになります。

モニターヘッドホンは無難なものを選ぶ

ヘッドホンについては、個人的には極端なものを選ぶ必要はないと思っています。

長年スタジオなどで使われてきた定番製品には、定番になるだけの理由があります。

私自身もモニターヘッドホンを長期間使用していますが、

重要なのは「そのヘッドホンを知っていること」です。

普段聴いている商業楽曲を何度も聴く。

自分のミックスを聴く。

イヤホンへ持っていく。

スマートフォンでも確認する。

またモニターヘッドホンへ戻る。

これを繰り返していると、

「このヘッドホンで低音がこれくらいなら大丈夫」

といった自分なりの基準ができてきます。

新製品が発売されるたびに機材を買い替えるより、信頼できる機材を長く使って理解することも大切だと思っています。

まとめ|良いミックスとは「どこで聴いても音楽として伝わること」

ミックス・マスタリングについて、

「どのプラグインを使えばいい?」

「どのスピーカーがおすすめ?」

「プロと同じ機材を買えば良い音になる?」

といった話は非常に多いです。

もちろん機材も技術も大切です。

でも私が最終的に一番重要だと思っているのは、

「この楽曲を聴く人に、制作者が意図した音楽がきちんと伝わるか」

ということです。

スタジオ。

モニターヘッドホン。

普通のイヤホン。

スマートフォン。

車。

どんな再生環境でも完全に同じ音にはなりません。

だからこそ、基準となる環境でしっかり音を作り、様々な環境で確認しながら、

楽曲の重要な部分がどこでも大きく崩れない状態を目指す。

私はこれがミックス・マスタリングにおける大切な考え方の一つだと思っています。

そして、ミックスを誰かに依頼する場合も、

「どれだけ高価な機材を持っているか」だけではなく、「最終的に誰がどんな環境で聴く楽曲なのかまで考えてくれるか」

を見てみるといいと思います。

私はこれまでレコーディングやPAなどの現場を経験してきましたが、現在ミックス・マスタリングを行う際にも、単純に音圧を上げたり派手な音にしたりすることだけをゴールにはしていません。

楽曲の方向性、公開する場所、想定されるリスニング環境まで含めて、

「その曲にとって、どういう音が一番自然なのか」

を考えながら仕上げることを大切にしています。